計測器の校正とその必要性について
ISO9001の管理者にとって校正とは、計測機器の精度を確認する作業です。器差のズレを直すことは非常に重要なことですが、まず自社の持つ各計測機器の現状を把握することが一番大事です。ただし確認作業は機能を改善する行為ではないため、修理やメンテナンスとは異なります。JIS計測用語の定義でも、標準との関係を確定する作業であり、計器を調整して誤差を修正することは含まないとされています。修理をするでもないのになぜするのか、それはISO9001の要求を満たすだけでなく自社製品の品質保全のためと言えます。製品の確かさを確定するのが計測機器ですから、その計測機器の確かさを確定する行為が必須なのは当然です。使用していればどんな機器でも経年変化などにより誤差が生ずるのは当然ですが、その誤差が精度に影響しないことを証明する必要があるわけです。ISOでは検査周期は決められていませんが、これは使用頻度や使用環境によって劣化度合いが変動するからであって、自社に合わせて定期的に行うのが原則です。
正しい検査には上位標準器が基準となる
上位標準器とは、簡単に言ってしまえば検査対象となる計測機器の精度を上回る計測機器のことです。例えばマイクロメータであれば最小表示は0.001となりますが、この精度を上回る標準器が上位標準器となります。この例で言えばブロックゲージがそれにあたり、1/1000mmのマイクロメータに対し1/10000mmの精度で測れるブロックゲージが上位標準器として使用できます。ただし、いくら計測単位が上位だからと言っても、そもそもブロックゲージのほうが狂っていたのではもちろん計測器にはなりません。そのため検査基準として使用する上位標準器は、実用測定器として日常的に使うことはできません。また、環境の準備も必要で、測定には測定室を設ける必要があります。この場合、ブロックゲージの世界標準温度は20℃ですから、その条件が達成される環境の準備が必須です。ちなみにこの標準温度は部屋の温度ではなくブロックゲージそのものの温度ですので間違えないようにしましょう。上位標準器が正しく作動するために、機器の表面温度と熱膨張係数を知り、応じた環境を設けることが条件となります。
プロの外部業者に仕事を依頼する意義
社内で検査を行うために社員教育を行い認定制度を持つ会社もあります。ただ、社員は部署異動や退職などにより随時入れ替わりが予想されますので、経験のない担当者でも一から勉強できるよう手順を含めたマニュアルや機器管理リストの整備が必要です。校正とは精度の不確かさを評価するものであり、ISOの本質を理解する必要があります。作業そのものに生産性がなくても、間違いのない製品やサービスを提供するための根幹であることを認識しなければなりません。ただ企業活動において生産性のない業務に人員を割くことは難しいのも事実です。そうした意味でも、計測器の校正は専門業者に委託したほうがスムーズな場合も多いでしょう。もしくは、基準となる上位標準器のみ借り受けるという方法もあります。